
本学院が提唱する「中山式自然療術」は、一般にいわれるカイロプラクティクや整体とは大きな違いがあります。
脊椎のゆがみを正し、圧迫されていた神経や血管の障害を取り除き、血液循環をよくして自然治癒力を高める。その原理は同じかもしれませんが、単に骨格の矯正をはかるだけでは、あらゆるタイプの疾患や痛みに対応することができないのです。また、診断後すぐに骨格のゆがみをとろうとすると、かえって痛みを増幅させ、緊張感を与えてしまう場合もあります。
中山式自然療術では、ほかのカイロプラクティクなどのように、ポキポキと関節を鳴らしたり、また、指圧のようにギュウギュウ指で押すこともありません。手のひらを使い、あくまでもソフトに優しくほぐしていきます。
そして、最大の特長は、施術の中心となるのが「腹部の軟部組織(筋肉と内臓)を調整する」ということです。

本学院の母体である中山整体療院には、別名・腰痛館というだけあって、腰痛に悩む人が数多くおとずれます。腰痛は今や日本人の国民病とも呼ばれるほどですが、その原因は複雑で、とてもひと言ではいい表せません。
ただ、直接的な原因なら、筋肉の流れに沿って考えれば、ある程度見当がつきます。根本的には、骨盤のズレと、腰を支える腹筋、背筋などの一部が衰え、全体のバランスを失うことにより、ほかの筋肉が緊張を強いられ、痛みが引き起こされるのです。事実、施術前に患者の腹部をさわると、多少の個人差はあれ、皆ヒンヤリとして、極端に緊張しているのがわかります。
筋肉の不自然な緊張は、血行不良を招きます。血行が悪くなれば、新陳代謝が活発でなくなり、体液やガスがたまって、おなかの中の内圧が上昇(腹部膨満感)します。腰痛患者のほとんどが、胃腸の不調を訴えるのはそのためです。内臓の機能低下と、その裏側の筋肉の緊張には、密接な関係があるのです。中山式自然療術は、手のひらで腹部の軟部組織(筋肉と内臓)のバランスを調整しながら、同時に脊椎のゆがみを正すことによって、無理なく痛みを取り除いていく独自の手法なのです。

中山式自然療術では、まず腹部をゆるめることから施術の手順が始まります。これは、ほかのカイロプラクティク療術などにはない、大きな特長です。
中医学では、腹部の小腸の部分を「丹田」といい、生命力エネルギーをたくさん発生させる非常に重要な場所と考えられています。「丹田」とは、燃え広がる炎を意味します。小腸をはじめとした消化器官は、食物から栄養をとり、それをエネルギーに変えていく働きをしています。消化器の働きが悪くなれば、消化吸収がうまくいかず、エネルギーが身体全体に行きわたらなくなってしまいます。つまり、腸は「生命の源」なのです。
小腸は心臓と同じく、めったにガンになることはありません。数秒ごとに新陳代謝を繰り返し、懸命に消化吸収活動を繰り広げています。腸で吸収された食物の分子は、小腸にある無数の毛細血管から、肝臓へ送られ、やがて身体全体へと届けられます。
こうした活動はもちろん、すべて自律神経によって、私たちの意思に関係なくコントロールされています。ホメオスタシス(生体恒常性)を維持するための自律神経は、交感神経と副交感神経に区別され、両者が互いにせめぎ合って、身体全体を自動調節していますが、消化活動全般をつかさどるのは、主にリラックスした状態で活性化する副交感神経のほうです。
たとえば、過度なストレスに対応して交感神経の緊張が高まると、血管が収縮し、消化器の働きは鈍くなり、それが腰痛の引き金になる場合もあります。また、痛みやコリに深くかかわるアドレナリンの作用も、交感神経によるものです。こうした悪循環が、痛みをさらに増幅させるのです。
交感神経と副交感神経、二つの神経は役割も通り道もまったく違います。交感神経が脊髄に沿って下に延びているのに対して、副交感神経のほうは脳幹によって支配され、脳の支配を受ける神経と同じ道をたどります。つまり、副交感神経は、腹部の内臓機能をつかさどる迷走神経と関係しているのです。
中山式自然療術によって腹部をゆったりとさすると、この迷走神経に連なった副交感神経が活発化し、代わりに交感神経の緊張が解かれて、全身の血管が広がり、身体全体に血液を十分に行きわたらせ、ゆがみに凝り固まった身体が温まって、無理なく調整されていきます。さらに、神経の伝達物質として働くアセチルコリンが分泌され、脳を活性化させて免疫力がよみがえります。腹部をゆるめることが、自然治癒力の向上に直結するのです。

西洋医学の分野でも最近、腸についての研究が盛んに進められています。これは、大腸ガンの急増にともない、腸内環境の重要性が見直されたことによるものです。腸内の環境をととのえることによって、免疫力が向上し、健康へとつながるというもので、食材研究、サプリメント、乳酸菌など、この考えのもとに、予防医学時代の中心となるさまざまな健康法が開発されつつあります。
これまで長い間、腸の主な役割は、水分や栄養を消化吸収し、排泄することだけだと考えられてきました。ところが、実は腸こそが、きわめて特殊な働きをもつ、人体の中でも最大最強の免疫システムの源だということがわかってきました。免疫細胞の約70%が腸管に集中しているため、腸の働きが安定していれば、免疫力が自然と向上し、健康な体調を維持できるのです。
免疫系の要であるリンパ球も、自律神経と深く関係しているといわれます。副交感神経が優位に働くと、リンパ球が活発化し、ウイルスやがん細胞を攻撃する力が増して、免疫力が向上するのです。中山式自然療術で腹部の緊張を和らげ、同時に腹部を走る副交感神経に働きかけることにより、体温が上がり、呼吸が深くなり、さらに、リンパ球が増えて、人間本来の力がよみがえるということ。まさにセルフメディケーションのカギを握る医療理論の実践版、予防医学の旗手といえるのです。

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